keyboard_arrow_right
keyboard_arrow_right
不気味で悲しいホラー「人魚の森」
未分類

不気味で悲しいホラー「人魚の森」

初めて読んだ高橋留美子作品は「人魚の森」を始めとする、人魚シリーズです。美しい表紙とタイトルに惹かれましたが、中身はおどろおどろしい人魚伝説と、それに翻弄される人々の、どこか切ない物語でした。

主人公の湧太は、人魚の肉を食べて不老不死になった青年です。
死ぬことも老いることも出来ず、普通の体に戻る方法を探しながら、たった一人で五百年も生きてきました。
そんな彼が自分以外に初めて会った不老不死が、少女・真魚です。
二人は共に旅をしながら、沢山の人達と出会い、別れていきます。
変わらない姿を怪しまれるので、一ヶ所に滞在出来るのは、少しの間だけ。
彼らが出会うのは、人魚に人生を狂わされた人々。
人魚の生き血を飲んで、年をとらなくなった女性と、その家族。
人魚の肉が原因で殺人を犯した男と、被害者。
そして不老になれず怪物になってしまった、沢山の人間達。
人魚の肉はあまりに強い毒で、食べて不死になれるのは、何万人に一人。
ほとんどは耐えきれず死ぬか、狂った化け物になるか。
それでも不死を求めて、肉を欲しがる者は後を絶ちません。
人間の心の弱さが、悲劇を産んでしまう。
不老不死の湧太も、知り合いに先立たれ続け、恋をした女性と連れ添うことも出来ず。
孤独な五百年を過ごしてきました。体は不老でも、心は普通の人間。
湧太には真魚が、真魚には湧太が、唯一の「同じモノ」なのです。まだシリーズは完結しておらず、二人のあての無い旅は、まだ続いています。
彼らは永遠にさ迷い続けるのか、それとも、人として死ねる日がくるのか。
いつか、続きの物語を読めると良いのですが……。
最後に、個人的に好きなエピソードを。湧太とかつて恋をした女性が出てくる「約束の明日」です。
添えなかった二人の姿が切なく、特に印象に残っています。