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ジェイムズ・ディッキー「救い出される」
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ジェイムズ・ディッキー「救い出される」

全体として冒険ものの起承転結がある内容で面白かったですが、特に冒頭のシーンが大好きです。
漠然と中年男性4人が人生に変化や転機を求めて惰性の毎日から逃れるために川下りへ出かける話だと捉えていましたが、バーで計画を練りながら広げられた地図の描写が大変素敵でした。
4人のジョッキでやっとのこと固定されて一望できる川(地図の上ではただの線)がどのように現実に差し迫ってくるのかという想像を駆り立てられるイマジナティブな出だしに虜になりました
。2人1組のカヌー操縦の組み合わせによる困難、それぞれが何を目的として参加しているのか、人物像や冒険への相違が徐々にもたらす不穏な雰囲気や自然の変化が常にストーリーを鮮やかに装飾しています。
暴力も報復も救済も一筋縄では行かない独立した自然界で初めて発揮される人間本来の性が痛々しくも微笑ましく、読み進めるのは苦よりむしろ楽しかったです。
少なくない犠牲者の上に助かった人間の未来が築かれますが、それぞれに冒険から受け取ったギフトを持ち合わせ新たな人生を切り開いていく様は必ずしもハッピーエンドでもエバーアフターでもなく、味わい深い哀愁に溢れていて読了後も心に染み入る作品でした。