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『海の斜光』は銀婚式を迎える頃から読みたい1冊!取り上げられているのは××だった
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『海の斜光』は銀婚式を迎える頃から読みたい1冊!取り上げられているのは××だった

森村誠一の『海の斜光』は短編集です。表題作のほかに「迷路」「華やかな郷愁」の2作品が収められています。

「海の斜光」と「迷路」は、不倫が物語を進めるきっかけになっています。いずれもパートナーに不貞を働いたのは妻です。夫は妻の不貞に気づきますが、妻は夫の手による復讐ではなく、別の形で命を落とします。

そのためか、「海の斜光」にも「迷路」にもドロドロした男女の情念は描かれていません。光文社文庫のカバーには、くれなずむ海に黒いシルエットを見せた、妊婦と思しき女性が静かに歩を進める姿が描かれています。そんな光景が似合っている作品です。

夫婦という関係にいつしか生じた欺瞞が、別の異性を求める心となり、その破綻はパートナーに感づかれてしまいます。夫は自分がどんな手段を取るのが適当かを思い悩みますが、結局は離婚するでもなく、夫婦という欺瞞を続けています。それに耐えられなくなった妻に、運命が結論を下します。

大きな事件は起こりません。それが一層リアルさを出しています。中高年になって、夫婦というものの裏側が見えてきた時、心をつかんで離さないものが、「海の斜光」と「迷路」には描かれています。新婚夫婦にはちょっときつい、銀婚式を迎える頃から読みたい作品です。